27.オールドレンズで記憶に残る写真を撮りたい(デジカメ編)

Pentacon 29mm F2.8 + Pentax KP + DxO FilPack(Adox Color Implosionフィルム)
解像感ぐずぐずで普段使いは避けたい...と思っていた描写破綻(?)な Pentacon 29mmの個性に色味破綻(?)なこちらも個性派なフィルム効果をぶつけてみる


オールドレンズ+デジカメ写真+DxO FilmPackはいかがでしょう


近年のデジカメ・スマホで皆が撮っているキレイな写真とはひと味もふた味も違う写真を撮ることができ、且つマニュアルフォーカスでじっくりと被写体と向き合う楽しさに気づかせてくれるオールドレンズ。このブログでも何度か書いています。

自分がオールドレンズ遊びを始めたカメラはSIGMA sd Quattro。フランジバックが長いため、対応できるM42マウントレンズばかり集めていました。
M42だけでは、オールドレンズ沼としてはまだまだ浅いと言われそうですが、それでも集まったレンズは11本。その後、Pentax KP、Fujifilm X-E1でもオールドレンズを使いまわしてきました。

いろいろ試していると、オールドレンズとデジカメ(センサー?)にはどうも相性があるような気がしてきました。

今回は、自分の気づきを時系列で書きます。

○オールドレンズデビューはSIGMAのsd Quattro(Foveon)でした

Foveon機で気に入った写真が撮れたのは、解像も色味もしっかりしているレンズ。Carl Zeiss Jena(特にFlektogon 35mm F2.4とPancolar 80mm F1.8)だけだった様な気がします。
フレアの出やすいレンズ(Jupiter-9など)やソフトフォーカスっぽいレンズ、色味の淡いレンズはあまり合わない気がしています(SIGMA Photo ProでRAW現像していても楽しくない)。

Carl Zeiss Jena Flektogon 35mm/F2.4 + SIGMA sd Quattro
Carl Zeiss Jena Flektogon 35mm/F2.4 + SIGMA sd Quattro
被写体背後からGODOX TT600ストロボをワイヤレス天井バウンス (トリガーはGODOX XT1-C)。
APS-C機で35mm F2.4でも寄れば相当ぼけます。白飛び上等かかってこい。


○Pentax KP+オールドレンズの組み合わせでは...

Carl Zeiss Jenaレンズはもちろん、Jupiter-9などのフレアの出やすいレンズもまた良い感じに撮れました。ただ、色味の薄いレンズについてはまだ少し面白みに欠けるかな...とも思いました。この頃、現像ソフトはAdbe Lightroomを使っていました。

KMZ Jupiter-9 85mm/F2.0 + PENTAX KP
KMZ Jupiter-9 85mm/F2.0 + PENTAX KP
フレアの出やすいJupiter-9を敢えて窓から差し込む光へ向けて撮影。

○M42レンズがそのまま付けられる、フィルムカメラPentax SPで撮ってみました

実はこのブログ、悲しいことに(?) 2019年春時点で検索からの流入が一番多いページが「PENTACON 29MM/F2.8は(個人的には)普段使いを避けたいレンズ」だったりします。ソフトフォーカスで色味も薄いこのレンズは(デジカメでは)普段使いしたくない...と書いたのですが、その後フィルム機で撮るとガラリと印象が変わったと追記しています。

PENTACON 29mm/F2.8 + PENTAX SP + FUJICOLOR100
PENTACON 29mm/F2.8 + PENTAX SP + FUJICOLOR100
デジタルでは使いみちがなさそうなオールドレンズでもフィルムだと生きる?

○自分的オールドレンズ専用機 Fujifilm X-E1(X-Trans)

軽量小型のミラーレス機でファインダー付、フォーカスポイントを細かく指定できてピーキングもできて中古格安だったから...という理由でオールドレンズ専用として購入したX-E1(1万数千円ほどでした)。

使ってみると上記ZeissやJupiter-9に加え、色味の薄いレンズでも好みの写真が撮れるように感じました。

カメラを購入した時には意識をしていなかったのですが、フジのカメラには「フィルムシミュレーション機能」があり、自分がRAW現像をする際にも多用していることがわかりました。

Fujifilm X-E1 + KMZ Jupiter-9 85mm/F2.0
Fujifilm X-E1 + KMZ Jupiter-9 85mm/F2.0
オールドレンズで心に残る写真を撮るためのキーワードは...「フィルム」?

○昔は「レンズの個性」×「フィルムの個性」で写真を撮っていたんだと実感

フィルム...。世代的に、大人になるまではずっとフィルムで撮られた写真を見てきた訳なので今更なのですが、引っかかるワードでした。

考えてみれば、特にカメラが趣味でも無かった若い頃の自分はフィルムだレンズだを意識して写真を撮ったことがありません。使っていたのはほぼ「写ルンです」で、写真=記録するためのものでした。

デジカメは「フィルムがセンサーに置き換わったもの」と簡単に考え、それぞれがどんな役割をしていたのかをあまり深く考えたことはありません。

「えっ?レンズが作る像を記録する役割は同じでしょ?」ぐらいのものです。
...いえいえ、それじゃぁあまりにも解釈が浅いのだと最近思います。

デジタル世代の感覚では、カメラ内部の役割をこんな感じで捉えています。

・『レンズ』の仕事は、外界の像を忠実に捉えた『像』を作ること。歪みや収差があると忠実では無くなるので極力排除すべき。
 ⇒嘘偽りの無い像

・『センサー』の仕事は、その忠実な像をディティールまで正確に受け止めること。レンズが作った像は完璧なので、それを汚すことのない無垢な存在であるべき。
 ⇒忠実な記録

・『カメラ』の仕事は、センサーが電気的に受け止めた信号を、写真データとして忠実に再現すること。レンズに入ってきた外界の景色と全く同じに再現できることが理想。
 ⇒忠実な再現

少々誇張して書いているので、そんなことは無いだろうと違和感を感じるかもしれませんが、であれば自分が考えるレンズ、センサー、カメラの仕事は何だと自問してみる良いチャンスだと思います。

それはそうと、この時点で「フィルム」と「センサー」の役割が全く同じではないことにすぐに気づきます。フィルムカメラの場合(現像処理などの後工程はあるものの)フィルムに光が当たった時点で写真情報としては概ね出来上がっています(デジカメで言う、センサーとカメラの両方の役割を持っている)。

気になる点がもう一つ。しつこいほどに「忠実な」と書きましたが、そもそもフィルムが目指していたものは忠実な記録・再現だったのでしょうか。

後にいろいろなフィルムで撮ったり、昔の作品を見たりして感じたのですが、フィルムで「忠実な再現性」なんて言ったら鼻で笑われそうなぐらい、フィルムは強烈な個性だらけです。見た目に忠実でないから嫌だ...と思われていたのなら、こんなに多種多様なフィルムは生まれなかったでしょう。

レンズも然り。オールドレンズがこれほどまでに多様な個性を持っているのは、今よりも技術的に未熟だったがゆえの不完全さからなのでしょうか?違うと思います。それならば、きっと新しいレンズが開発されるたびに古い「失敗作」は淘汰されてきたはずです。

フィルムもレンズも「個性ありき」だったのだと思います。あまりにも突飛なものは世間に受け入れられず淘汰されたのかもしれませんが、忠実だったものだけが長く生き残ったわけでもありません。

フィルム時代、きっと撮り手は「こんな被写体をこんな風に撮りたい」と考え、それに合った個性のフィルムを選び、レンズも選ぶ...そんなことをしていたのだと思います。

「こんな風に撮りたい」欲が先にあり、自分の欲を満たせるフィルムや機材を様々な個性の中から選ぶのが当たり前だった時代...とても素敵です。

今は、少々写真をレタッチしようものなら「これは本物じゃない」と言い出す人が出るほど忠実潔癖主義な人がいるご時世ですが...。


さて、話をオールドレンズ+デジタルカメラに戻します。

オールドレンズの多くは「レンズの個性×フィルムの個性」で撮りたい写真を目指した時代に作られたもの。これを、無垢な(没個性な)現代センサーのカメラに付けて撮るのは片手落ちだと思うのです。

先のPentacon29mm/F2.8が、デジタルとフィルムで全く違う印象になるのは正に好例。Pentacon29mmレンズの個性には、それに対峙できるような個性を持ったフィルムをぶつけてやるべきなのだと思います。

もちろん現代は、RAW現像も含めてレタッチができるので「後から」撮りたいイメージに近づけることができます。
ただ、なんだかしっくりこないからと「撮り手が受動的に作業する」羽目になるのは本末転倒な気がするのです。

また、フィルムの銘柄一つ一つが持っていたような個性に相当する様なインパクトを、定形のパラメータ調整だけでできるかと言うと...できなくはないのでしょうが大変。そんな苦行はやりたくありません。

○オールドレンズ+デジカメでは、フィルムシミュレーションを積極的に使うことにしました


デジタルカメラで失われた「フィルムの個性」を補うために、自分はRAW現像時にフィルムシミュレーションを適用するのが近道だと考えました。

前述のFujifilmのカメラでは、カメラ自体にシミュレーション機能があり、RAW現像時にも適用フィルムを変えることができます(主にFujifilmが販売していたフィルムのみですが)。

もっと色々なフィルムの個性をオールドレンズの個性とぶつけてみたい...
Fujifilm以外のカメラ+オールドレンズで撮った写真でもフィルムシミュレーションしたい...

そんな欲望に応えてくれる選択肢がいくつかあるようです。
著名どころ?は VSCOExposure7DxO FilmPack の3種プラグイン。

これらとRAW現像ソフトとの組み合わせは以下のようなパターンがあるようです。

1.VSCO Film プラグイン + Adbe Lightroom RAW現像(詳細不明)
2.Exposure7 プラグイン + Adbe Lightroom RAW現像(詳細不明)
3.DxO Filmpack5 + Adbe Lightroom RAW現像(2ソフト間データ受け渡しの手間)
4.Exposure7 単体 RAW現像(対応フォーマットが少ないとの噂も?)
5.DxO Filmpack5 + DxO Photolab2 RAW現像(Photolab2のメニューにFilmPackが統合される)
6.DxO Filmpack5 単体 でJPEG等画像を加工

使い勝手等のレビューは先達諸兄にお任せします。
自分が試したのは3、5、6。最終的に「5.DxO Filmpack5 + DxO Photolab2 RAW現像」に落ち着きました。

SIGMA 85mm EX DG HSM (for Pentax) + Pentax KP +
DxO FilPack(Adox Color Implosionフィルム)
オールドレンズではないですが...何でもない風景×デジタルレンズ&カメラ×個性たっぷりフィルム効果

※RAW現像ソフトのDxO Photolab2(旧製品名DxO OpticsPro)について、注意点があります。
・ベイヤーセンサー以外のカメラRAW現像は非対応です(SIGMA Foveon機も、Fuji X-Trans機もNG)。
・ベイヤー機でも、DxOが未解析の新カメラのRAWは現像できません(SONYのα6500などはOKだが、19年2月発売のα6400のRAWファイルは3月末現在時点で開けない:4月のバージョンアップで対応予定⇒結局19年5月のバージョンアップで対応しました)。DxOというと、カメラやレンズのスコアを発表しているDxO Markが有名です。DxO Photolabで現像できるようになるのは、カメラ × 純正レンズ群で撮影テストを踏まえた光学補正データが適用されてからということなのだと思います。
DxO Photolab2でRAW現像対応カメラは、こちらから確認することができます




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