26.Lens Turbo IIを使ってオールドレンズを隅から隅まで堪能する

Carl Zeiss Jena Pancolar 80mm F1.8(F11) + Lens Turbo II + Fuji X-E1
路地裏にて
Carl Zeiss Jena Pancolar 80mm + Lens Turbo II + Fujifilm X-E1


(私的)気軽なオールドレンズ専用カメラFujiFilm X-E1 + Lens Turbo II で谷根千散歩


安価(中古OK)で軽量小型、拡大表示できるファインダー(EVF)が付いていてM42オールドレンズ用アダプターもある...。

オールドレンズらしい撮影を「身軽に」したいと思い、オールドレンズ専用カメラとして購入したのがFujiFilm X-E1(APS-C)でした。
Fujiのカメラはフィルムシミュレーションができるので、いわゆる「何でもかんでもシャープで鮮やか」な今風とは異なる、味のある写真が撮れるのも魅力。

ただオールドレンズを使っていて思うのは、色々な収差が詰まったレンズの周辺領域は「らしさ」の塊。APS-Cのカメラではこの周辺領域の像を捨てていることになります。フルサイズの解像やボケ味には憧れは無くても、この「捨てている領域」の像は欲しいかも。

そこでフォーカルレデューサーアダプターの出番です。35mmフルサイズ対応のレンズが作るイメージサークルを、より小さなイメージサークルに縮小変換するレンズ付きのアダプターです。

選んだレデューサーアダプターは中一光学(ZHONG YI OPTICS)のLens Turbo II [M42マウント⇒FUJI Xマウント]です。Amazonでは1.9万円ほどですが、自分はeBayで1.5万円強の新品を購入。高性能と言われるMetabones製のアダプターもありますが、M42レンズ用のアダプターはありません(そして高い)。

2020.7 追記
Metabones製のレデューサーアダプター(Speed Booster)でM42レンズを使う方法としては、アダプターの2段付け(例えばM42->Contax YashicaアダプターとContax Yashica->Fuji X Speed Booster)があります。


オールドレンズとカメラの間にもう一つレンズをかます訳なので、少々の画質劣化は当然あるでしょう。でもよほど「もやもや」「ボケボケ」解像にならない限り「気軽な撮影」には十分ではないかと期待します。

読んでくださる方々が気になるであろう「Lens Turbo IIの解像比較レビュー」などは先達諸兄におまかせいたします。自分の感想は「確かに等倍にまで拡大すると、読めると思った遠方看板の文字などが読めなかったりすることがあるので解像力は落ちているんだろうな」ぐらいです。マニュアルフォーカスでじっくり撮る楽しみや、味のある描写・ボケ味を小型軽量のカメラで得られるとすれば、自分にとっては十分実用に耐えるものだと思います。ディティールが気になる方は、各写真をクリックしてみてください(Flickrで大きく表示されます)。

今回は谷根千散歩で自由気ままに撮影、現像してみました(谷根千とは、都内の谷中、根津、千駄木界隈の下町風情たっぷりのエリアの総称です)。
※色味重視のFUJIユーザーにはご法度かも知れませんが、RAW(raf)撮影⇒TIFFに出力後、DxO PhotoLab2 & DxO FilmPack5で思うがままに現像しています。


それでは、行ってみましょう。


まずは、日暮里駅横の細道から、絞りに絞ってパンフォーカスで

Carl Zeiss Jena Pancolar 80mm F1.8(F11) + Lens Turbo II + Fuji X-E1
日暮里駅とスカイツリー
Carl Zeiss Jena Pancolar 80mm + Lens Turbo IIにてF11かそれ以上まで絞って撮影。
※周辺減光はレンズ特性やケラレではなくDxOのクリエイティブヴィネット効果です。
※空などがざらついているのはDxO FilmPackでフィルム粒状感を加えているからです。


駅舎の屋根(日暮里駅は駅横の小道から見下ろすことができる)からスカイツリーまで、しっかり写し込もうとかなり絞っています。これだけ絞れば流石にレデューサーアダプターの解像劣化も無いように感じます。


せっかくのフルサイズ画角なので寄って開放ボケ味を堪能

Carl Zeiss Jena Pancolar 80mm F1.8 + Lens Turbo II + Fuji X-E1
根津神社鳥居の前にて
Carl Zeiss Jena Pancolar 80mm + Lens Turbo II
絞り開放(F1.8)最短撮影距離付近から撮影。ピントは「髙」の字。

前回「APS-Cからフルサイズに移行すればどの程度ハッピーになれるのか?」で書きましたが、フルサイズとAPS-Cの違いはレンズの作る像から切り取る矩形の大きさの違いです。フルサイズの方が大きく切り取れるので、被写体に近い場所からでもはみ出さずに切り取ることができます(APS-Cでは遠ざかって写さないと収まらなくなるのでボケ味も薄れる)。

APS-Cにレデューサーアダプターを使った場合、フルサイズと同様に「寄って」撮れます。撮ってみて思ったのですが、こうやってぼかして撮る以上「全域に渡ってのシャープな解像」を求めていない訳なので、レデューサーアダプターによる解像力の劣化を気にする必要が無くなってくる気がします。ピント位置の解像も、自分にはこれで十分です。そもそもオールドレンズ求めているのは「毛穴まで写るポートレート」ではないので。


超広角オールドレンズFlektogon20mmも、疑似フルサイズAPS-Cならばちゃんと超広角で撮れる

Carl Zeiss Flektogon 20mm F2.8(F5.6) + Lens Turbo II + Fuji X-E1
上野 五條天神社にて
Carl Zeiss Jena Flektogon 20mm F2.8 + Lens Turbo II
F値は5.6から8ぐらいだったと思います。

APS-Cカメラでオールドレンズを使う際に困るのが広角~超広角で撮れるレンズが少ないこと。せっかく買った超広角Flektogon 20mmも、APS-Cでは画角が狭くなり換算30mm相当の普通の広角レンズほどになってしまいます。

自分は今回、フォーカルレデューサーアダプターによってデジタルでは初めてこのレンズの超広角の絵を見ることができました。

レデューサーによる解像劣化が一番表れるのはこういう写真かもしれません。白い文字が滲んでいる様に見えるのが元々なのか、オールドレンズの能力なのか、レデューサーのせいなのかはっきり分かりません(分からないということ自体が解像感の低さ)。


オールドレンズらしさを楽しむならば、中一光学Lens Turbo II + APS-Cカメラの組み合わせでも十分だと思う。

Carl Zeiss Jena Pancolar 80mm F1.8 + Lens Turbo II + Fuji X-E1
谷中ぎんざ入り口にて
Carl Zeiss Jena Pancolar 80mm + Lens Turbo II
絞り値は失念しました。開放1.8だったのかも?周辺減光はDxOのクリエイティブヴィネット効果です。

今回何気なく撮った中で、「これがこのレンズが捉えている雰囲気の全体像か」としみじみ感じた一枚。遠方の雑踏のごちゃごちゃ感を圧縮しつつ、手前から奥への人物位置で奥行き感や段差の感じもわかる。
APS-Cにそのままこのレンズを付けていた場合、手前の男性、右端で語らう男女、これから階段を下ろうとする男性の足元などは写しこめなかったはずです。

ピント位置は40m向こうの「谷中ぎんざ」看板。80mmの開放F1.8だとすると、ピントが合って見えるのは看板の手前側約10mぐらいから奥側20mぐらいの範囲だと思われます。手前の人々は、それぞれの行動の雰囲気は伝わるもののうまい具合にボケてくれて顔つきまではわかりません。

画角と被写界深度のスペックの話だけで言えば、APS-Cでも撮れないわけではありません(理論上は、同じ位置から焦点距離53mmでF1.2ぐらいのレンズで撮れる)。そういう意味では無闇にフルサイズ至上主義に傾倒しなくても良いと思うのですが、「それぞれ個性を持ったオールドレンズの捕らえる像を隅から隅まで堪能しよう」とするとやっぱりフルサイズ画角は魅力的。そのためにフルサイズカメラに買い換えるのも一つの手ですが、今度はカメラ側の絵作りが今と変わってしまう(遠回しに言っていますが、端的にいうと自分はオールドレンズのためにSONYユーザーになる気にはなれなかったということです)。

今、愛用しているAPS-Cカメラをそのままに、フォーカルレデューサーアダプターでオールドレンズの隅々まで堪能するという選択肢はアリなのだと思います。

2020.7 追記
オールドレンズのためにSONYユーザーになる気は無い...だったのですが、その後「動く子供をオールドレンズフル画角で、AF-Cの瞳AF撮影」という目的のためにα9を購入しています。もちろん、Fujiのカメラ+レデューサーアダプターの組み合わせも健在。用途が違うので両立しています。

追記:おまけ画像です

Carl Zeiss Flektogon 20mm F2.8(F5.6) + Lens Turbo II + Fuji X-E1
根津神社入り口にて
Carl Zeiss Flektogon 20mm F2.8(F5.6ぐらい?) + Lens Turbo II + Fuji X-E1
フレア・ゴーストを期待して逆光で撮りました。

Carl Zeiss Flektogon 20mm F2.8(F5.6) + Kodak ProImage100
【Film】概ね同じ位置から同じレンズを使ってフィルムカメラでも撮ってみました。
(Carl Zeiss Jena Flektogon 20mm F2.8(F5.6 + CONTAX AX + Kodak ProImage100))

FujiFilm EBC Fujinon 55mm F1.8 (F11) + Lens Turbo II + Fuji X-E1
上野恩賜公園にて
FujiFilm EBC Fujinon 55mm F1.8 (F11) + Lens Turbo II + Fuji X-E1
オールドレンズっぽい光条を狙って撮りました。



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