15.SIGMA sd Quattroでのストロボ選び

Sigma SD Quattro strobe usability
Sigma SD Quattro strobe usability

sd Quattroでオフカメラストロボ撮影をしたいっ(前編)


前回触れましたが、sd Quattroでポートレートを撮るようになり、その流れでストロボ購入、ライティングの勉強を始めました。

ここで、sd Quattroでオフカメラストロボ撮影ができるようになるまでの苦労話を書きたいと思います。
前編はsd Quattroでのストロボ選びで苦労した話ですが、内容はストロボ撮影の基本のキのような事柄です。Amazonベストセラーのマニュアルストロボ NeewerTT560でまともな写真が撮れない...方にも参考になると思います。
後編でシグマ sd Quattro環境でのオフカメラストロボの話を書きます。

ストロボ撮影のキホンのキ ...だけど自分は何も知らなかった

コンパクトデジタルカメラ(コンデジ)からスタートした自分は、当初外付けストロボについて右も左も分からない状態でした。

外付けストロボ(クリップオンストロボ)に関するネタはネット上に数多あり、まずはいろいろと調べてみるところからスタートした訳ですが...。結果よくわからず自分で試行錯誤しながら学ぶ羽目に。

...今思えばどのサイトも初心者に優しくない情報ばかり(曖昧な表現で安心させ、購入誘導してアフィリエイトを得ようとするサイトが多い)。

ここで、自分が思う「最初にこれを知っておけば色々迷わなかったのに...」なあれこれを書いてみたいと思います。ストロボ購入で失敗したくない!と考える、誰かのお役に立てれば。

ストロボ撮影って「ただ照らす」だけじゃないのね...

一眼レフ、ミラーレス一眼で外付けストロボを使おうとする場合...

カメラにとって、マニュアルストロボ、社外ストロボの光は「とても余計な光」です。

どういうことでしょう?

説明の前に、まずは失敗談から入ります。

自分が初めてのストロボを買った頃の心境から追っていきます。
コンデジ内蔵ストロボしか知らなかった自分にとっての当初イメージはこんな感じでした。
「ストロボって暗い所を照らすものでしょ?」
「内蔵ストロボより大きいから、より明るく照らせるのでしょ?」
「直射ではなく天井バウンス撮影できるからいい感じに撮れるんでしょ?」
「明るくなればシャッター速度が稼げるから暗い所でも手ブレせずに撮れるんでしょ?」

さて。外付けストロボに関するレビューや紹介サイトを見ているとまず目に入るのが「ガイドナンバー●●の大光量」といった記載。

元コンデジユーザー的にも、ガイドナンバーの小さなストロボより大きなストロボの方が明るく光る高性能なんだろうなぁと想像できます。加えて、「天井バウンスできる(発光面を上に向けられる)」こともマストかなぁ...。初心者的には購入時の要件はそんなものです。

そして。「メーカー純正ストロボは高い」「最近は中華性ストロボも良く出来ているしガイドナンバーもそこそこ大きい」「ストロボはマニュアルで十分」「シグマ機で動作確認」...ネット上のそんなフレーズだけをかいつまんで解釈し、失敗しても痛くない値段で初めて購入したストロボが、Neewer TT560でした。

それが苦労の始まりだとは知らずに...。

意気揚々と使ってみると「不自然に明るすぎる写真(暗すぎる写真も)を量産する羽目に」...。
ただの室内写真なのに、思ったような写真が撮れない...。家内にも「ストロボ無いほうが綺麗に撮れてるんじゃない?」と言われる始末。

No Flash
ストロボ無しでの撮影イメージ 「手ブレが心配だからストロボ点けてみるかぁ」



with TT560(failure)
「うわぁっ!明るすぎ...ストロボの光量落とすかぁ」


with TT560(failure)
「あれ?明るさはまぁまぁになったけど、こんなに明るいのになんで手ブレするの?」


最初のつまづきです。

しばらくして、やっと理解したのが次の3点。

「自分が買ったのはマニュアル(設定しかできない)ストロボだった」
「意図した明るさの写真にすべく、実はカメラがすごくサポートしてくれている」
「マニュアルストロボ、社外ストロボを付けると、そのままではカメラのサポートが台無しになる」


マニュアルストロボ...だった点については、買った時点で「言葉としては」分かっていました。ただ、「マニュアル=自動でない ものが何か」を理解していなかった。

大事だったのは2つめと3つめ。カメラのサポートとマニュアルストロボの関係です。

知らずにカメラがサポートしてくれていること

デジタル一眼レフやミラーレス一眼を始めてしばらくすると分かってくることに、「絞り値」「シャッター速度」「ISO感度」があります。名前と意味ぐらいはわかっていたつもりでしたが、自分がハッキリと理解していなかったのは次の2点。

・撮られる写真の明るさ(露出)はこの3つの組み合わせ「バランス」で決まる。
・ストロボを付けて撮影する場合、この3つに「ストロボ光量」と「ストロボ⇔被写体の距離」の2要素が増える。トータル5要素でバランスをとる必要が出てくる。

ストロボの無い状態で撮る場合、実はこんなことが起こっています。
(普段からMモードで撮っている人は除いて)多くの人は3要素(絞り、シャッター速度、ISO感度)の内2つ以上をカメラ任せにしています。例えば絞り優先モード(A、Av)で使う場合、シャッター速度とISO感度はカメラ任せです。シャッター速度優先(S、Tv)の場合、絞り値とISO感度がカメラ任せです。
※自分はISO感度を最低感度に固定にしたAモードをよく使います。この時はシャッター速度がカメラ任せです。PモードでISOもオート設定にしている人は、3要素全てをカメラ任せにしています。

「カメラ任せ」と書くと、カメラが自動的にオススメをチョイスしてくれる便利機能のように聞こえますがそんなアバウトなものではありません。撮れる写真が適正な明るさ(撮る前に液晶モニタ等で確認している明るさ)になるように「自動計算してバランスをとってくれている」が正しいです。
逆に言うと「カメラがバランスをとってくれなければ、適正な明るさ(露出)の写真はできない」ということでもあります。イメージ通りの明るさの写真が撮れるのは、カメラのサポートあってのことなのです。

イメージし易いように画を書いてみました。「適正な明るさ」を維持するために、カメラはこんなことを自動でやってくれています。
露出決定の3要素(初期値)
↑①Pモードでカメラが選んだ初期の設定(f2.8、ISO1600、SS1/250)がこれだとします。三角形が大きくなるほど明るい写真に仕上がると思ってください。三角形を大きくするためには、各要素を外側へ向かわせる設定をします(絞り⇒開ける、ISO感度⇒数値を上げる、シャッター速度⇒遅くする)。

露出決定の3要素(Aモードで絞った場合)
↑②「この被写体はボカさずに撮りたいなぁ」とAモードで絞りをf8まで絞ったとします。
するとカメラは「適正な明るさ」が変わらないように残りの要素値を変更します。

露出決定の3要素(Aモード+ISO感度も下げた場合)
↑③「ISO3200じゃちょっとノイズが心配だなぁ」と絞りf8のままISO感度を800まで下げたとします。
残った要素はシャッター速度だけですが、カメラはまだ頑張って「適正な明るさ」を維持しようとします。
現在、ほぼ確実に手ブレが発生しそうなシャッター速度(1/15秒)ですね。

マニュアルストロボや社外ストロボが、カメラのサポートを台無しにする理由

さて、外付けストロボを付けた場合どうなるか。
わかりやすくするため強引に表現すると「メーカー純正以外のストロボを付けた場合、せっかくカメラがバランスをとってくれた3要素を崩す」ことになります。

カメラにしてみれば、純正以外のストロボは「認識できない=無いのと同じ」です。
なので、いくらストロボを付けていても、ストロボ無しの3要素だけで計算をします。

なのにシャッターを押すと...突然赤の他人(ストロボ)がやってきて余計な光を放って来る。。当然、せっかく計算した露出のバランス値もおじゃんになります。

先程までのシチュエーションに、シャッター速度を稼ぐために良かれと思ってマニュアルストロボ光を足した場合のイメージです。ストロボが加わると、露出の決定要素が増えて、三角形が五角形に変わります。
露出決定の5要素(カメラの意図しないストロボ光を加えた場合)
↑ ④「手ブレが心配だなぁ」と③のカメラ設定のまま、カメラが認識できないストロボを点けて撮影すると...
カメラが目指していた写真の明るさイメージ(液晶画面で見ていたイメージ)に対し、余分な光が加わることになります(真っ白の写真に)。しかも、シャッター速度は1/15のままなので、きっと写真は手ブレしてしまうでしょう。白とび&手ブレの写真...「ストロボがあれば室内でも綺麗な写真が撮れる」という期待からは大きく外れてしまいます。


これを回避するにはカメラが決める3要素の値を人の手で補正するしかありません。
この「補正行為が必要=自動じゃない」という点が、「マニュアル」ストロボの所以です。

簡単にやるなら、カメラ側の「露出補正」機能でアンダー側(暗い仕上がり)を指定しておきます。上の画で言えば、青い三角形をわざと小さめに用意しておき、ストロボ光が加わって丁度良い大きさになる感じ。カメラを騙すような感じですが、これで少しはマシになるはずです。

with TT560 exposure compensation(OK)
カメラの露出をアンダーに補正して、やっと何とか普通に撮れたけど...なんだ?上部に暗い縞が...

with TT560 exposure compensation(failure)
さらに露出をアンダー補正すると、今度は下にも暗い縞が...
どうやらシャッター速度が同調限界を超えたよう...
※sd Quattroのストロボ同調速度は1/180秒
それより早い速度でちゃんと撮るにはハイスピードシンクロ撮影が必要です。
ちゃんとやるなら「Mモード」を使って手動の修正が必要です(絞りなら閉じる、シャッター速度なら速くする、ISO感度なら低くする)。

いずれにせよ、事前の液晶モニタでは「えっ?こんなに暗く撮るの?」...と思わせておいて、シャッターを押すと普通の明るさの写真になる。これがマニュアルストロボ撮影時の流れです。

ところで、マニュアルストロボの「マニュアル」という表現ですが、物は言いようだなとつくづく思います。
「細かな設定を自分で決めることができる」とも言えますが、「細かな設定まで自分でやらなければ上手く動きません」とも言えます。車と同じですね。どちらも間違ってはいませんが。

ネットでは、マニュアルストロボ推進派による前者表現が多いように思います。ただ、初心者には優しくない。
自分がストロボ初心者に説明をするならば、「カメラ側の設定補正を自分でやらなければ意図した明るさの写真が撮れない」のがマニュアルストロボです。
※「カメラ側」の設定というのがミソです。理屈がわかるまで、自分はずっと「ストロボ側」を一生懸命設定していましたから」。

そんな面倒な設定毎回やってられない...⇒カメラと同じTTL方式に対応したストロボを探しましょう

ストロボを使っても、AモードやSモードを使って今まで通り液晶モニターに見えた通りの明るさで撮れるようにならないの?やはりお高い純正ストロボじゃないとできないの?

それを可能にするのが「TTL(Through the lens)」という技術です。
先に、「メーカー純正以外のストロボを付けた場合、せっかくカメラがバランスをとってくれた3要素を崩す」と強引に書きましたが、正確には「メーカー純正でなくても、TTLに対応したストロボであればバランスを崩すこと無く撮影できます」。

シャッターを本押しする前に、ストロボから瞬間光を試写し、被写体に反射してレンズに入ってきた明るさを分析、求める明るさに達するために必要などれくらいか?を決めて、必要光量をストロボから本照射させる。というような「連携通信」をカメラ・ストロボ間でやるようです。実際にストロボ光を飛ばした状態で露出を決めることになるので、事前に仕上がりの明るさが予測できるというわけです。

注意が必要なのは、「通信」なのでプロトコル(取り決め、手順段取り)があるということ。全世界統一のプロトコルなどはなく、メーカー各社が独自で定めています。
このため、N社カメラにC社ストロボを付けてもTTLは働きません(言語が違うのでコミュニケーションできない)。

ニコン語はi-TTL、キヤノン語はE-TTL、ソニー語はP-TTL、シグマ語はSA-STTLと呼ばれています。

ニコンのカメラであれば、i-TTL対応と書かれたストロボを買えば、面倒な設定から開放されるということになります。

ここでネット情報に一言物申したい...。格安ストロボの「Canon/Nikon/Pentax/Olympus『対応』」といった文言に注意!初心者にとって紛らわしすぎる!

「E-TTL対応」とか「i-TTL対応」とか書いているわけでは無いのです。これはどういうことでしょうか。

実はこの表現、キヤノンやニコンのカメラに付けても「発光はできます」と言っているだけなのです。「純正ストロボのように明るさのバランスを保ったまま撮影できます」とは一言も言っていない。

メーカーを問わず、カメラのホットシューには各社共通のX接点と呼ばれる電極接点があります。シャッターを押すと通電されるため、それを拾えば発光だけはできるのです。ただ、X接点が接しているだけではカメラからは「ストロボがある」と認識はされません。

格安ストロボは、X接点があることをもって「各メーカー対応」を謳っているだけなのです。TTL対応ではないので、実態はマニュアルストロボだということになります。

少しお金を出してTTL対応ストロボを買えば、マニュアルで使うこともできるんでしょ?⇒純正ストロボではそうとも言えない

自分もそう思いました。大は小を兼ねるというか...。
そして追加で買ったのがSIGMAのEF-610 DG ST(シグマ用)です。

でも、そこには次の落とし穴が...。
大が小を兼ねないこともあるのです。

「メーカーのTTLには対応しているけど共通X接点に対応していないストロボ」です。TTL専用ストロボと言えそうです。各メーカーからエントリー機として出ているストロボに多いようです。

もちろんTTLはできます。事前に液晶で確認した通りの写真が撮れて問題はありません。
ただ、慣れてきてちょっとした応用をしようとするとすぐに限界が来ます。

例えば、ストロボをカメラから離して使おうとすると、共通X接点が無いため汎用品を使った拡張性にも乏しいといった壁にぶち当たります。

まぁ、メーカーにしてみれば、「このストロボはX接点に対応しないため、他社製カメラや汎用ホットシューでは発光すらしません」などとわざわざ書きませんよね。

TTLもできて、そこそこ応用的な使い方もできる安価なストロボ、ありませんか?

今回いろいろな壁にぶち当たってみて、初心者が最初の1台でこういうストロボに出会うのはなかなかハードルが高いと感じました。
ただ、ニコンやキヤノンなどのメジャーなカメラ向けであれば、探せば社外ストロボで良いものが見つかると思います(GODOX社などの1万円しないぐらいで)。

ただ、自分のカメラはSIGMAのsd Quattro...。

社外ストロボでSA-STTL対応のもの、見つけられません。。

最初から出口は無かったようです。いろいろ巡って最終的に、シグマユーザーには最後の壁があるということがわかりました。

結局、自分はシグマ純正のフラッグシップストロボ EF-630(シグマ用)を3つ目のストロボとして買うことになりました...。他のカメラメーカーのフラッグシップストロボよりは随分と安いですけどね...。


頭の整理を...

ここまで、わかりやすく説明するために誇張した表現をしましたが言葉の綾もあります。
一度、整理すると...

●マニュアルストロボ(マニュアル専用ストロボ)…

本来の意味は、どのメーカーのTTLにも対応していない(TTL機能が無い)、マニュアル操作「のみ」で扱うストロボです。上で書いたとおり「カメラ側の設定補正を自分でやらなければ意図した明るさの写真が撮れません」。

加えて「TTL機能が付いていてもカメラのTTLと方式が異なる場合」。マニュアルストロボと同じ動きをします。例えば、キヤノンE-TTL対応のストロボをニコンカメラに取り付けた様な場合です。発光はするかもしれませんが、カメラとのTTL通信はできません。

シグマSA-STTLに対応した社外ストロボはありませんでした...。ということは、純正以外は全てマニュアルストロボ同等ということになってしまいますね。

●TTL「専用」ストロボ…

特定のカメラメーカーのTTLに「のみ」対応したストロボです(純正ストロボにしかないと思います)。厄介なことに、他社カメラや汎用ホットシューに載せても発光すらしません。

●TTL「対応」ストロボ…

特定のカメラメーカーのTTLに対応し、且つ「マニュアルモード」にも対応したストロボです。まずこれを探すべきなんでしょうね。その上でマニュアルで設定できる項目、その他応用機能と価格を天秤にかけたい。
ただし、シグマのカメラでこれに該当するのは純正のEF-630、EF-610 DG SUPER(ひと世代前)だけなのだと思います。


次回、sd Quattroでのオフカメラストロボ(有線、無線)チャレンジの話へ続きます

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