32.子供写真をフィルムカメラで撮る時は、中央重点測光&+1EV露出補正を基準にしています
フィルムカメラで子供を撮り始めて学んだ「露出」に関するアレコレ
RAW現像できるデジタルカメラは便利です。パソコンにデータを取り込んで、「ちょっと暗いかなぁ」と思っても後から全体的に明るくしたり、暗部だけ明るくしたり自由自在。
なので撮影時の露出設定はあまり気にせずにカメラにおまかせで撮ることが殆どでした。測光はマルチパターン、露出補正は±0。ずっとそうやって使ってきました。
しかし自分は現在、子供撮影時はスポット測光 & +1EV露出補正を基準にしています。デジカメやポジフィルムではこの設定のまま撮影。ネガフィルムでは+1.3EV〜+2EVまで露出補正することもあります。
理由は、自分がフィルム撮影でつまづいて、後から知ったアレヤコレヤがあったから。今回はこの経緯について書いてみたいと思います。
※一言でフィルムカメラと言っても、完全機械式(露出計も無い)からAF可能なものまで色々あります。今回はやや近代寄りのフィルムカメラ(絞り優先モード有り、測光モード切り替え有り)の想定で書きますのでご承知おきください。
フィルム撮影のつまづき①「室内で撮った写真の中に、時々異常に暗い写真がある」
室内で撮っている色々な写真の中に、時々出てくる露光失敗写真 暗い...
(LOMO KMZ PO2-2M 75mm F2(@F2) + CONTAX AX + AGFA Vista400)
Avモード & マルチパターン測光、露出補正は±0で撮影。自分はこれまでずっとこの方法で撮っていました。ストロボは、使っていた様な気もするけど記憶が定かではありません。
|
例えば上の様な写真。同じ日に同じ室内で撮ったほかの写真はそうでも無いのにこの一枚だけ異常に暗い...。ストロボが光らなかったのかな...?理由がよくわからずそんなことを考えて流していました。
後々分かったのが、上の写真が「逆光」であること。室内だから逆光を気にする必要は無いと思っていましたが、確かに窓から入る光が床に反射して光っています。
もう一つ大事なのが「マルチパターン測光は画角内の全体を見て露出を決めている」ということ。イメージ的な表現ですが、画角内の明るい領域と暗い領域、それぞれの面積を勘案しつつ加重平均した明るさに対して露出を決めるのがマルチ測光という感じでしょうか。
撮りたい被写体は子供だけなのですが、画角の中に「非常に明るく光る床」がそれなりに広い面積で存在します。加重平均の結果「画角の中は結構明るい」と判断され、速いシャッター速度が選ばれる。でもそれは被写体を適正露出で撮るためには速すぎる...といったことが起こっています。
フィルム撮影のつまづき②「同じ感度のフィルム、同じシチュエーションで撮ったのにContaxカメラではPentaxより暗くなる」
絞り優先モード有り、測光モード切り替え有りのフィルムカメラとして、自分はCONTAX AXとPentax Z-1Pの2台を使用しています。どちらもAvモード & マルチパターン測光、露出補正は±0で撮影していたのですが、ずっと思っていたのが「CONTAXで撮った写真の方が暗い...」ということ。せっかくCarl Zeissレンズが使えるCONTAX機なのに、なんだか全体的に暗いし暗部がノイジーだなぁと若干不満に感じていました。
そこで実験。
上記の室内逆光シチュエーションで、同等レンズの絞り開放Avモードにて、人肌に近い色を画角中央に置いて測光をしてみました。2機種の結果が以下です。
画角内に逆光を含む状況で絞り優先モード、人の顔を画面中央に捉えた場合の測光結果(CONTAX vs Pentax) |
結果、2機種の差は歴然でした。マルチ測光時のCONTAX AXの測光結果はPentax Z-1Pよりも1.5段ほど暗い(光る床に引っ張られて速いSSが選択される)。
マルチ測光のロジックは各社各様で特に定まった基準がある訳ではないのですが、まさか手持ちの2機種でこんなに差があるとは思いませんでした。
興味深いのは中央重点測光の結果。こちらはメーカー・機種が異なっても結果は同等の様です。メーカー・機種問わず安定した測光結果を得るためには、中央重点測光(またはスポット測光)を使うべきなのか...。
以下、その後色々調べて分かったことです。
③カメラ内蔵の測光器はモノクロで光を捉えている。スポット測光で露出を決める際は被写体の色によって露出補正すべき(人物メインなら+1EV補正)。
色のある被写体を... |
モノクロで見るとこんな感じに... |
18%グレーは下のモノクロバーで「右から3番目」ぐらいの明るさです。カラーバーの右から3番目の色は「赤」。これは、赤い色の部分をスポット測光で測ると、見たままの赤の明るさで撮れるということを表しています。
問題は、例えば「黄色」の部分をスポット測光で測った様な場合に起こります。
黄色に対応する箇所(左から2番目)をモノクロバーで見ると、18%グレー(右から3番目)よりも随分と明るいことがわかります。カメラは、測光箇所が18%グレーになるように露出を決めるため「もっと暗くなるようにシャッター速度を速くしなければ」と判断し、結果、見たままの黄色よりも随分と暗い黄色が撮られてしまいます。
見たままの黄色で撮るためには露出補正+1EVなどしてシャッター速度が遅くならない様にする必要があるということです。
「スポット測光は測光箇所の色味に合わせて露出補正をすることとセット」になっており、真面目にやると非常に面倒だということがわかります。
具体的には...真っ白の犬:+2EV、人の肌色:+1EV、コバルトブルーの海や空:-1EVなど撮る対象によって補正値が異なる様です。
自然撮影などで様々な色のものを撮るためにこれを覚えるのは大変ですね...。
ただ、自分の場合は子供撮影がメインなので毎度露出補正に悩む必要はありません。
「スポット測光の+1EV露出補正で顔を測光」と決めておけば、カメラ機材やライティング条件が変わっても(逆光でも)常に安定した状態で撮れるということです。
カメラやライティングが変わっても同じ適正露出値が得られることのメリットの方が大きいので、以降この方法を採用することにしました。
③フィルムに「記録」できる明暗情報の幅と、プリントやデータ化で「再現」できる明暗情報の幅は異なる。
デジカメRAW現像をやったことのある方なら分かるかもしれませんが、一見広範囲に白飛びしてしまった様な状況でもRAW現像処理で救うことができます(限度はありますが)。明部の明るさを落としてやると、さっきまで広範囲に白飛びしていた領域の階調を取り戻すことができます。これは、画面上で「再現」されている明暗幅よりも広範囲の明暗情報がRAWデータに記録されていることを意味します。対して、JPG撮って出しで撮影したデータに広範囲の白飛びがあった場合、画像処理ソフトで明部の明るさを落としても「広範囲の白飛び」が「広範囲の灰色」に変わるだけで、明部の階調を取り戻すことはできません。JPG保存で記録できる明暗情報の幅がRAWよりも狭いことが理由です。
④そして、ネガにはプリント・データ化で「再現」可能な明暗幅の倍近くの範囲で情報が記録されている。
以前読んだ何かの本から借りてきた言葉なので、私個人で正確性を保証できるものでは無いですが...カラープリントの明暗「再現」幅…6段分
リバーサルフィルムの明暗記録幅…6〜7.5段分
ネガフィルムの明暗記録幅…10〜11段分
だそうです。ネガにはプリントの1.6倍~1.8倍近くの明暗情報が記録されており、RAW現像同様、撮った状態よりも「明るくしてプリント」したり「暗くしてプリント」しても階調を失わずに再現できるということです。単純に考えて、一見白飛びに見える箇所の+2.5、黒つぶれに見える箇所の-2.5段分の情報が記録されている...と考えると相当粘る感じがします。
プリント再現幅と同等の記録幅であるリバーサルフィルム(撮った情報とほぼ同じ状況でしか再現できない=プリント時に融通が効かない)と比べると、何とも余裕のある記録幅では無いですか。
ちなみにデジタルRAWの記録幅はと言うと...実はリバーサルフィルムとあまり変わらないという話があります。確かに一見白飛びしている領域を補正して救えるのは1段分ぐらいかなぁ(再現幅6段に対して±1段で7.5段~8段程度の記録幅?)という気がします。
いずれにせよ...ネガは凄い。とりあえず撮れば後からなんとでもなるのでは?という印象です。
⑤とはいえネガも、暗い側より明るい側に耐性が強い。露出アンダーの記録を明るく補正するよりも、露出オーバーの記録を暗く補正する方がキレイに仕上がる。
⑥カラーネガフィルムをお店に出すと、プリント・データ化の機械が露出と色被りを自動で補正してくれている。
これは何となく実感が湧きます。フィルムカメラを始めた頃に何だかいい加減な露出設定で撮ったネガ写真もお店に出すと見れるプリントで返ってきます。
特に、ストロボの設定を間違えて「うゎ、明るすぎた^^;きっと真っ白な写真になる...」と思った写真は意外と綺麗に。逆に、本ページ2番目の写真の様に「暗すぎる」状況で撮ってしまった写真は、なんとか見れるものの暗部の色味やノイズが少々汚い感じです。
ネガで撮る時は、敢えて露出オーバーに設定すると新たな発見が得られて楽しいと思います。
コメント
コメントを投稿